発達障害の困り事は伝わりにくい

最近テレビや新聞で発達障害のニュースや記事が以前よりは頻度が高く取り上げられるようになり、認知度が上がるという点では好ましいと思います。一方で語られている内容を聞いていると「このニュース(記事)を人が見て(読んで)、果たして発達障害者が生きやすくなる社会になるのか?」というモヤモヤした気持ちが浮かぶのです。その正体が何なのかが最近思いついたので書こうと思います。

それ、見えますか?

Male Nurse” by Direct Media/ CC0 1.0

世の中には色々な困難を背負って生きている人がいると思います。私の判断で困難さとその影響を分類すると以下の3つです。

1.健康:病気やケガや障害を背負っており、①睡眠・食事・運動等の生命維持、②家事・買物等の日常生活、③仕事に行く・学校に通う等の社会生活に支障が出る。

2.経済力:本人や本人の親などの養育者の所得が少なく、①日々の衣食住、②進学、③恋愛・結婚、④子育て、⑤子や親の介護等、人生で訪れるライフイベントに支障が出る。

3.社会参加:肉体機能的に動けない・動けるが家の外に出れない(引きこもり・気力の低下等)ため、①人間関係を通じた自己肯定感の向上、②必要な福祉へのアクセスに支障が出る。

これらの困難は人に認識される事で問題意識を持ってもらえます(当然とも言えますが)。例えば通勤・通学で松葉づえを使って電車に立っている人をイメージしてください。こういうケースだと「座っている人から席を譲ってもらえる」という配慮を受けられると思います。

では発達障害者の以下のケースならどうでしょうか?
①「思い込みでA2社に払うはずの振り込みをB社に払ってしまった」
②「ケアレスミスで〇〇さんの給与の金額を一桁少なく処理してしまった」
③「この服が欲しいから衝動的にカードで買ったけど、預金残高がない」
というときに、
発達障害だから仕方ないよ。ドンマイ
と、どれくらいの割合の人が言ってくれるでしょうか?私はあまりいないと思います。しかも定型発達(発達障害ではない人)だけでなく、同じ発達障害者でさえも
それはあなたの自己責任でしょ。理由付けて甘えないで
と言ってしまう人が、結構な割合でいるのではないでしょうか?

もちろん発達障害のケースは、電車の松葉づえのケースと違い、職場や家庭に迷惑をかけているという点で、人から同情されにくいのだと思います。しかしこれこそが、発達障害の生きづらさなんです。松葉づえで立っていれば「足に問題がある人だな」と思ってもらえますが、うっかりミスをしても「脳機能に問題がある人だな」とは思ってもらえないのです。

配慮される=可視化できる困り事

というわけで結論ですが、発達障害の人が配慮を受けるには、以下の3つが大切です。

1.周囲に可視化する

障害というか生きづらさは見えてナンボの世界です。困っている事は周囲に分かってもらう必要があります。
仮にタイムマシンがあったとして、原始人にペットボトルを見せたらどうなるか?という本を読んだのですが、原始人はペットボトル=蓋を開けて中身を飲む物、という認識がないので、喉が渇けばそれを放り捨てて川や水たまりをを探しに行くそうです。
つまり人間は自分が見えているものしか認識しません。だから自分の認識できない困り事は「ない」と思われてしまいます。目に見えない発達障害の困り事で配慮が欲しければ、自分の困り事を周囲に知らしめる必要があるのです。

2.困りごとを言語化する

発達障害者、それ以外の障害やケガ・病気でも共通なのですが、私の職場で身体障害者雇用で働いている人を見て気づくのは「言語化能力の高さ」です。「私は〇〇の困り事があるので、時間がかかります。だから、量を減らしてください。または他の人に補助に付いてもらえますか?」と実に正論で分かりやすく上司や同僚に困り事を分かりやすく伝えています。

3.人間関係を作っておく

あとは人間関係が良好であるとなお良いですね。権利を主張するのは人として当たり前の事だと思いますが、仕事で言えば、
・職場内のホウレンソウ(報告・連絡・相談)ができている
・期日内に一定の成果を仕上げる人
・仕事以外のコミュニケーションも良好(雑談ができる・職場で人手不足のときに手伝える)
といった事ができていると、ときには2.の言語能力の高さを発揮するまでもなく周囲から手伝ってもらう等の配慮を得られているように見えます。
とはいえ、空気が読めない、気が利きにくいというのも発達障害の特性の一つなので、無理して人間関係を良好にしようとしてストレスを溜めてしまうケースもあるので要注意です。

自分ニーズ

上記1.~3.をすべてうまくできなくてもいいので、できるところからやっていきましょう。よく会社が売り上げを伸ばす際に「顧客ニーズをつかめ」と社員に檄を飛ばしますが、これを発達障害者が合理的配慮を受けるために言い換えると「自分ニーズをつかみましょう」です。
自分のニーズが分かれば、苦手な事やどんな配慮を受けたいかという内容も決まってくるはず。皆さんも日頃の困り事を感じる場面があれば、ノートや手帳にリスト化して自分ニーズの把握に努めてはいかがでしょうか?(以下筆者の実際の仕事上のメモ例)
・名簿や金額の入力作業は自分一人では限界があり、チェック体制が必要
・スケジュールを管理しているつもりでも忘れるので週一の課内会議で必要事項をリマインドしてほしい
・確認作業で長時間労働が続く週は在宅勤務を増やしてほしい

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